MaaS(マース)は、複数の交通手段を、利用者の目的地までの移動として組み合わせ、検索・予約・決済等をまとめるサービスです。Mobility as a Service の略で、新しい乗り物の名前ではありません。

国土交通省は、地域住民や旅行者一人ひとりの移動ニーズに応じて、公共交通とそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決済等を一括で行うものと説明しています。観光や医療など、目的地側のサービスとの連携も日本版MaaSの特徴です。

ただし、実際のサービスがすべての交通手段、予約、支払いを一つにまとめているとは限りません。MaaSという名前だけで判断せず、自分の地域で何がどこまでつながっているかを見ることが大切です。

明日の選択室:一枚の移動チケット

この対話は本サイトの創作です。

ミオ「駅までバス、その先は電車、最後はシェアサイクル……別々に調べるのが大変です」
カイ「MaaSは、乗り物ごとの手続きを、目的地までの一つの移動としてつなぐ考え方だよ」
ミオ「一つのアプリがあるかより、必要な区間が本当につながるかを見るんですね」

1分でわかるMaaS:乗り物ではなく移動全体を見る

MaaSは、電車、バス、タクシー、オンデマンド交通、カーシェア、シェアサイクルなどを、利用者の移動目的に合わせて扱います。大きく分けると、次の要素があります。

要素 MaaSで扱うこと
移動ニーズ 誰が、どこから、どこへ、いつ行きたいか
交通手段 鉄道、バス、タクシー、自転車、徒歩などを組み合わせる
利用手続き 経路検索、運行情報、予約、チケット、決済等をつなぐ
目的地のサービス 観光、医療、買い物、イベントなどと連携する場合がある

たとえば、自宅から病院へ行く移動を考えます。

自宅 → 予約型交通 → 駅 → 電車 → 病院

従来は、それぞれの時刻表、予約先、乗車券、支払い方法を別々に確認することが少なくありませんでした。MaaSでは、この一連の移動について、利用できる経路をまとめて探し、対応する区間は予約や購入まで進められるようにします。

ここでいう「一括」は、必ずワンタップで全部終わるという意味ではありません。外部サイトに移る区間、別の支払いが必要な区間、予約対象外の交通が残るサービスもあります。

何がつながる?サービスごとに統合範囲は違う

住宅、駅、病院などの目的地と交通経路のつながりを確認するミオとカイ

MaaSの説明では「検索・予約・決済」が並びますが、実装されている範囲はサービスごとに異なります。次の表は公式の段階分類ではなく、利用者が機能を見分けるための整理です。

つながる範囲 できることの例 確認したい点
情報 複数交通の経路、時刻、遅延、乗り場を探す リアルタイム情報か、対象交通は何か
予約 タクシーやオンデマンド交通を予約する 予約可能な区間、締切、変更方法
チケット・決済 周遊券や複数区間の乗車券を購入する 対象区間、利用条件、払戻し
交通以外 観光施設、イベント、医療などと組み合わせる 交通と目的地の予約が連動するか

MaaSアプリを入れても、対象外のバスや鉄道があれば、その区間は別に調べます。反対に、専用アプリがなくても、ウェブや既存サービス間の連携によって移動をまとめている場合があります。

「MaaS対応」という看板よりも、対象エリア、対象交通、予約できる区間、支払い方法を確認した方が、実際の使いやすさが分かります。

日本版MaaSは地域課題の解決まで視野に入れる

国土交通省の日本版MaaSは、交通の利便性だけでなく、観光、医療、買い物などとの連携や、地域が抱える課題の解決も重視しています。2025年度の支援事業でも、複数の交通事業者が連携し、多様な交通サービスを一つのサービスとして利用できる移動体験と、他分野との連携が対象になりました。

地域の課題 MaaSで支えられる可能性
駅や停留所まで遠い 予約型交通やシェア交通を幹線交通につなぐ
観光地を回りにくい 交通と施設利用を組み合わせた周遊を案内する
通院の乗り継ぎが難しい 移動経路と予約時間を確認しやすくする
運行情報が分散している 複数事業者の情報を同じ入口から探せるようにする

一方で、MaaSだけでバスの本数、運転手、車両、道路、停留所が自動的に増えるわけではありません。既存交通が少ない地域では、オンデマンド交通などの供給、運行費用、現地で支える人まで一緒に設計する必要があります。

地方交通での自動運転との組合せは地方交通は自動運転で変わる?、高齢者の現在の選択肢は高齢者の移動手段はどう確保する?で分けて扱っています。

自動運転・AI・キャッシュレスはMaaSそのものではない

自動運転車、経路提案、決済手段が移動サービスへ接続される場面

MaaSは、自動運転、AI、キャッシュレスと一緒に語られます。ただし、これらはMaaSを支える技術や交通手段であり、同じものではありません。

技術・仕組み MaaSでの役割 MaaSに必須か
自動運転 移動手段の一つとして経路に組み込める 必須ではない
AIオンデマンド交通 予約に応じて配車や運行経路を調整する 必須ではない
キャッシュレス チケット購入や複数サービスの支払いをつなぎやすくする 実装方法による
交通データ 経路、時刻、運行、予約、チケット等を連携する サービス連携の基盤になる
スマートフォン 検索・予約・購入の入口として使われることが多い 唯一の入口とは限らない

自動運転車が走っていても、駅や目的地への乗り継ぎ、予約、運休時の代替が分からなければ、移動全体はつながりません。反対に、自動運転がなくても、既存の鉄道、バス、タクシーなどを連携させたMaaSは成り立ちます。

実際のMaaSを使う前に確認したい7項目

スマートフォンの案内と電話相談の二つの入口を確認するミオとカイ

サービス名にMaaSと書かれているかどうかより、自分の移動が完了する条件を確認します。

  1. 対象エリア:出発地と目的地が範囲内か
  2. 対象交通:使いたい鉄道、バス、タクシーなどが含まれるか
  3. 予約範囲:検索だけか、予約までできる区間はどこか
  4. 支払い:一括購入か、外部サービスや車内支払いが残るか
  5. 変更・払戻し:遅延や運休、予約変更時の連絡先と条件は何か
  6. 利用支援:電話、窓口、紙の案内、バリアフリー情報があるか
  7. データ利用:位置・予約・決済など、何を誰と共有するか

国土交通省のMaaS関連データ連携ガイドラインは、移動履歴に個人情報が含まれる可能性を挙げ、個人情報保護法等に従ったプライバシー対策が必要だとしています。また、高齢者、障害者、訪日外国人など、多様な利用者のニーズに配慮することも示しています。

アプリを使える人だけに入口を限定すると、移動に困っている人ほど利用しにくくなることがあります。電話予約や有人案内を残すか、家族や支援者が手続きを補助できるかも、サービスの一部として確認したい点です。

MaaSのメリットと課題を分けて見る

観点 期待できること 自動では解決しないこと
利用者 経路や手続きの分散を減らす すべての区間の予約・決済、運賃の値下げ
交通事業者 データ連携や乗り継ぎ改善につなげる システム費用、運行人員、採算の確保
地域 観光・医療・買い物と交通を連携する 交通空白そのもの、道路や停留所の整備
データ 運行改善や計画に活用できる 権限管理、品質、標準化、プライバシー対応
非常時 代替経路を案内できる場合がある 通信障害時の利用、現地の誘導、代替輸送

MaaSは「アプリを導入すれば完成」ではありません。交通事業者、自治体、目的地側の施設などが、目指す課題、費用、データの扱い、運用を合わせ続ける必要があります。

未来分岐点:一つにつなぐ前に、最後まで行けるかを見る

複数の交通手段がつながる街への光の経路を進むミオ

MaaSが目指すのは、乗り物を新しく見せることではなく、目的地までの移動を使いやすくすることです。

その成果は、アプリの機能数ではなく、次の問いで確かめられます。

必要な人が、必要なときに、
途中で手続きや案内からこぼれず、目的地まで行けるか。

複数の交通を検索できても、最後の区間が対象外なら移動は完了しません。決済が一つでも、運休時の連絡先が分からなければ安心して使えません。MaaSを見るときは、「何が一つになったか」と同時に、「何がまだ別のままか」を確認してください。

移動技術全体の見取り図は移動・都市の未来まとめ、自動運転の段階は自動運転はいつ実用化される?で確認できます。

参考リンク

記事の理解を深めるために参照した、または確認先として役立つ資料です。必要に応じてリンク先の最新情報も確認してください。