「AIでなくなる仕事」の一覧には、たいてい事務が入っています。事務で働いている人や、これから事務の仕事を探す人は、どう受け止めればいいのか迷います。
この記事では、今の数字、事務が挙げられる理由、作業ごとの評価、AIの使い方、今できることの順に確かめます。出どころは、2026年9月29日に実際に開いて確かめました。
事務職はAIでなくなる?今わかっていること

三つの事実を並べます。
一つ目。事務で働く人は、減っていません。 総務省の労働力調査で、事務の仕事をしている人の数はこう動いています。
| 年 | 事務で働く人 |
|---|---|
| 2009年 | 1,246万人 |
| 2019年 | 1,326万人 |
| 2022年 | 1,401万人 |
| 2025年 | 1,448万人 |
2025年は、働く人全体(6,828万人)の約2割にあたります。
二つ目。AIが事務の仕事を減らしたとは、確認されていません。 厚生労働省の労働経済白書(2026年9月)は、日本や欧米の数字を比べたうえで、AIが事務の雇用や求人を減らしたとは一概に確認できなかった、と書いています。
三つ目。それでも、事務は最も影響を受けやすい仕事と評価されています。 国際機関の評価と、求人の少なさは、次の節から確かめます。
まとめると、「もうなくなり始めている」とも「心配いらない」とも言えません。
事務職がAIに奪われると言われる理由

国際機関や国の資料が、そろって事務を挙げているからです。
| 誰が、いつ | 事務について書いていること |
|---|---|
| 国際労働機関(ILO)、2023年8月 | 事務の作業の24%は、生成AIの影響を強く受けうる。さらに58%は中くらいに受けうる。ほかの職業では、強く受けうる作業は1〜4% |
| ILOほか、2025年5月 | 最も影響を受けやすい区分に入る職業の多くは事務。データ入力、文書の入力、経理や記帳、一般の事務 |
| 国際通貨基金(IMF)、2024年1月 | 事務はAIの影響を受けやすく、AIに助けられて伸びる度合いが低い。仕事を失う危険がほかより高い |
| 世界経済フォーラム、2025年1月 | 2030年までに人数が最も減る見込みの仕事は、事務と秘書。理由にはAIのほか、高齢化と経済成長の鈍りも含む |
| 経済産業省、2026年3月 | 2040年に、事務職は約440万人余る可能性がある。前提つきの推計 |
読むときに気をつけたい点があります。ILOは、自分たちの数字を「実際の雇用への影響ではなく上限」と説明しています。影響を受けやすいことと、仕事がなくなることは同じではありません。
一方で、ILOはこうも書いています。AIで仕事が速くなれば、必要な人数が減ることはありうる、と。
事務職の求人は、AIが広がる前から少ない

事務の仕事を探す難しさは、AIだけでは説明できません。
| 時期 | 事務の有効求人倍率 | 全体 |
|---|---|---|
| 2016〜2019年の平均(AIが広がる前) | 0.46倍 | 1.52倍 |
| 2022〜2025年の平均 | 0.44倍 | 1.27倍 |
有効求人倍率は、仕事を探している人1人に対して、求人が何件あるかを示す数字です。事務は、AIが広がる前から、2人に1件もありませんでした。
事務の中でも、区分によって大きく違います。2026年7月の数字です。
| 事務の区分 | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 一般事務 | 0.29倍 |
| 事務用機器の操作(データ入力など) | 0.28倍 |
| 会計事務 | 0.56倍 |
| 営業・販売の事務 | 0.87倍 |
| 生産関連の事務 | 1.32倍 |
| 事務の全体 | 0.36倍 |
同じ月に、事務の求人は約18万件、事務の仕事を探している人は約50万人でした。ハローワークの統計で、民間の求人サイトの求人は入っていません。季節の調整をしていない月の数字です。
賃金はどうでしょうか。白書によると、2022〜2025年の事務職の賃金は、年に平均4.0%上がりました。全体の2.9%より高い伸びです。ただし白書は、これがAIの影響かどうかは慎重に判断する必要があると書いています。
AIで代替されやすい事務の作業、されにくい作業

事務の仕事は、いくつもの作業でできています。資料が作業ごとにどう書いているかを並べます。
| 作業 | 資料の評価 | 出どころ |
|---|---|---|
| 情報の記録、整理、分類、保管 | 影響を受けやすい | ILO(2023年)、労働経済白書 |
| データ入力 | 影響を受けやすい | ILO(2025年)、世界経済フォーラム |
| 定型の文書や表の作成、要約 | 影響を受けやすい | 労働経済白書、ILO(2025年) |
| 定型の連絡文 | 影響を受けやすい | ILO(2023年) |
| 記帳、伝票、請求書 | 影響を受けやすい | ILO(2023年、2025年) |
| 予定の調整、会議の記録 | AIが助けるが、人の手が多く残る | ILO(2025年)。2023年の評価は楽観的すぎたと直している |
| 問い合わせや苦情への応対 | 影響を受けやすいという評価と、人を助ける使い方の両方がある | ILO(2023年)、労働経済白書 |
| 審査や承認などの判断 | 人が担う | ILO(2025年)。判断、監督、説明の責任を人に残す例を挙げている |
| 企画、立案、調査 | 作業としての評価は見つからなかった | 白書は、AIで生まれた余力の使い道として挙げている |
この評価は、技術的にどこまでできそうかを見たものです。「AIに任せてよい」という判断ではありません。扱う情報の秘密の度合いや、間違えたときの影響で、任せ方は変わります。
表の下の三つに注目してください。判断、調整、企画は、事務の仕事の中にもあります。同じ「事務」でも、どの作業が多いかで、受ける影響は違ってきます。
事務職のAI活用:使う側に回る

不安を調べる人は、使い方も調べています。資料から分かることを三つ挙げます。
経験の浅い人ほど、助けになりやすい。 白書は、問い合わせ対応の仕事でAIを使った研究を紹介しています。経験の浅い人は仕事の速さが34%上がり、経験の長い人にははっきりした差が出ませんでした。
教わる機会があると、効果を感じやすい。 職場での訓練と自分での学習の両方がある人は、仕事が良くなったと答える割合が37.0ポイント高くなりました。
日本は、職場で教わる機会が少ない。 金融・保険業でAIを使う人のうち、会社から訓練を受けた人は日本が26.9%でした。米国は60.5%、英国は57.2%、ドイツは54.8%です。
始めるときの順番です。
- 職場のルールを確かめる。使ってよいAIと、入れてはいけない情報を知る
- 間違えても直せる作業から試す。メールの下書き、要約、表の整理
- AIの出した内容を、自分で確かめる。数字、名前、日付は特に見る
事務職とAIの年表

2025年
2025年
確かめられている
事務で働く人は1,448万人。2019年の1,326万人より増えている
働く人全体(6,828万人)の約2割。年の平均。
総務省統計局(2026年1月30日)公的機関労働力調査 長期時系列データ
2026年
2026年7月
確かめられている
事務の仕事の有効求人倍率は0.36倍。一般事務は0.29倍
ハローワークの統計。季節の調整をしていない月の数字。事務の求人は、AIが広がる前から少ない。
厚生労働省(2026年8月28日)公的機関一般職業紹介状況(令和8年7月分)
2026年9月29日
確かめられている
AIによって大きな雇用の減少が生じている証拠は、現時点で示されていない
令和8年版の労働経済白書の評価。個別には、仕事を生む面と失わせる面の両方がありうるとも書いている。
厚生労働省(2026年9月29日)公的機関令和8年版 労働経済の分析
2029年
- いま
今後数年(2025年6月から)
予測されている
AIの活用で、Amazonの事務系の総人員は減る見込み
アンディ・ジャシー氏(Amazon CEO)(2025年6月17日)本人・当事者の発表Message from CEO Andy Jassy: Some thoughts on Generative AI
2030年
2026〜2030年
予測されている
新人向けの事務系の仕事の半分が、AIに置き換わりうる(「今後1〜5年」)
2025年5月の発言を、本人が2026年1月の文章で説明した。今まさに置き換えが起きているという主張ではない、とも書いている。
ダリオ・アモデイ氏(Anthropic CEO)(2026年1月)本人・当事者の発表The Adolescence of Technology
2030年まで
予測されている
世界で9,200万の仕事が失われ、1億7,000万の仕事が生まれる
雇用主へのアンケートがもと。人数が最も減る見込みの仕事は事務と秘書。理由には、AIのほかに高齢化と経済成長の鈍りも含む。
世界経済フォーラム(2025年1月)報告書The Future of Jobs Report 2025
2035年
2025〜2035年ごろ
予測されている
日本の労働人口の約49%が、技術的にはAIやロボットで代替できるようになる
技術的に代替できる可能性の推計。発表元が「社会環境要因は考慮していない」と書いている。2026年の労働経済白書は、雇用が大規模に代替されているわけではないとまとめた。
野村総合研究所、オックスフォード大学の研究者(2015年12月2日)報告書日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に
2040年
2040年
予測されている
事務職は約440万人の余剰、AIやロボットを使いこなす人は約340万人の不足になる可能性
国内の投資や産業の転換が進む場合という前提つきの推計。労働経済白書は「相当の幅を持ってみることが必要」と添えている。
経済産業省(2026年3月)公的機関2040年の就業構造推計(改訂版)について
- 確かめられている
- 統計や調査で、すでに確かめられていること
- 予測されている
- 研究機関・企業のトップ・研究者などの見通し。外れることがある
分かれ道:事務の仕事が大きく減ったら、あまり減らなかったら

こうなったら
大きく減ったら
- 記録、入力、定型の文書づくりが中心の求人が、先に減る
- 事務の中で、判断や調整の多い仕事に人が集まる
- 事務の経験を生かして、別の職種に移る人が増える
ならなかったら
あまり減らなかったら
- 人数は変わらず、一人が受け持つ作業の中身が入れ替わる
- AIを使える人と使えない人で、任される仕事に差が出る
- 求人の少なさは、今と同じように続く
どちらに寄っているかを確かめる目印毎月の「一般職業紹介状況」で、事務の有効求人倍率を見ます。年に一度、労働力調査で事務で働く人の数を見ます。0.36倍から下がり続けるか、1,448万人から減り始めるかが目印です。
どちらの道でも、求人が少ないことは変わりません。AIの話とは別に、知っておきたい事実です。
今できること

- 自分の作業を書き出して、表と照らす。 「影響を受けやすい」とされた作業が、一日のどれくらいを占めているかを見ます。
- 判断や調整の作業を、少しずつ増やす。 確認を任される、段取りを組む、相手と調整する。今の職場でできる範囲から始めます。
- 学び直しの制度を確かめる。 教育訓練給付金は、国が指定した講座の費用の20%から、条件を満たすと最大80%が支給されます。パートや派遣で働く人も対象です。条件は人によって違うので、ハローワークで確かめてください。
未来分岐点:手放したくない作業を一つ決める

事務の仕事がどうなるかは、誰にも言い切れません。決められるのは、どの作業をAIに任せて、どの作業を自分の仕事として磨くかです。
事務の仕事の中で、私が手放したくない作業は_____。
一つ決まると、次に学ぶことが選びやすくなります。
